不労所得となるビジネスをしている人、または稼いでいる人は日本国内にいる限り税金に悩まされることがすごく多い。そのため最近ではタックスヘイブン地域の注目も上がってます。特に昨年末の仮想通貨投資で注目を浴びているラブアン島について、疑問を持つ人も周りに増えてきたので今日はがっつり解説して疑問を解決していきます。
タックスヘイブン地域に興味津々な人も多いと思うので、是非、熟読して下さい。きちんと税制が安いのには理由があり、その適用を合法に受けるためには制度趣旨をきちんと理解した上で行動することが大事だからですね。
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ラブアン島とは?

ラブアン島とは、香港、シンガポール、マカオ等と比べても、アジアでもっとも税率が低い金融経済特区。今までは、国内では意外と知らない人が多い経済特区でしたが、昨年末のTV特集と仮想通貨の人気もあって一気に注目を浴びてきたと感じます。
元々ラブアン島は、マレーシア政府が、1997年の香港返還時期を狙って、香港の機能をラブアンへ移行させるために意図的に作り上げたタックスヘイブン地区、日本で正直ここを利用してるという話は今まで聞いたことがありませんでした。
知人に聞いたところ、実際は小さい島で、ダイビングスポットとして有名みたいで、車で一時間もあれば一周できてしまうくらいの大きさ。
ラブアンとは、マレー語で「良港」「停泊地」を意味し、歴史上貿易拠点であった香港の恩恵を、マレーシアに呼び込もうとして失敗した歴史を持つ。また、国際的な金融センターとして日本国内の地名度は、決して高くはないけど、世界では割と注目を浴びてる場所。
ただ、日本のタックスヘイブン税制に当然引っかかる地区にはなるので、国内の人が節税目的に利用しようとした場合は、リスクをよく踏まえた上で利用する必要がある点が一番のポイント。
もちろん専門家への相談も必須なのは言うまでもない話ですね。
1、参考資料
ラブアン島の節税メリット

これは、驚異の法人税率3%で、かつ、最大税額60万円と言うもの。これだけ見るとここで納税したいと考える人が後を立たない理由はよくわかるけど、まあ、そんなに簡単な話ではありません。実際はかなり複雑。
最近出てきた、ラブアン法人の設立サポート会社の中には 簡単に「 日本のIT事業もラブアン島を利用することで節税可能」と書いているところもありますが、 鵜呑みにしないで下さい。
ラブアン島のデメリット

まず、実際のところ税務署はラブアン島を利用して納税していたとしても、その事業の実態をみると言う点を最初に理解して下さい。
単純にペーパーカンパニーがラブアン島にあるからといって、メリットを享受できるわけではない。と言う当たり前の話。これが理解できてるだけで、騙される確率はググッと減ります(笑)
では、実態とはどう言う面で見られるのか?これは明確な見解はありません。国際的な税務の問題は、グレーゾーンも多く、 税理士や税務署に相談したとしても、明確な結論もでず、 完全な白であると確信できるに至ることも少ないケースが多いのがラブアン島に関わらず実態です。
例えば、日本の国税がどう言う実態を見てくるのか?と言うと以下のようなケースです。
1、所属:ラブアン法人の株主や役員が日本居住者かどうか
2、事業実態:サービスが日本で提供されているかどうか
ラブアン法人のように、 法人の登記をする国、 取締役や株主が住んでいる国、 サービスを提供する国、 などがそれぞれ異なる場合は、 それぞれの国の税制や租税条約が適用される可能性があり、 場合によっては、ひとつの国だけでなく、2つ以上の国で課税の対象となってしまうケースもある。
実際、ふざけるな!と思う話だけど、両方から請求されたという話も聞く。ひどい話だと国同士が訴訟になったりすると、全額納税者が訴訟費用を負担するというケースもあるみたいなので、税金は本当に緻密に調べた上で対策を練って欲しい。
それぞれの国がそれぞれ課税したいと考えてるし、 それぞれが独自に税法をさだめており、それぞれの税法がバッティングすることもあるので、事前によく国内の税務の専門家と確認は必須。
そして、日本居住者や日本法人がラブアン法人を利用する場合の注意として、日本居住者の場合、日本にはタックスヘイブン対策税制があるので、 ラブアン法人に留保した利益さえも(=配当や役員報酬を払わずにラブアン法人に残した利益さえも)、原則としてその日本居住者株主の個人所得と認定され、日本で申告する必要があり、日本で課税されるという点。
要は、日本に住んでたらラブアン島に法人作っても簡単には節税はできないって話ですね。
ラブアン島でメリットを享受するための条件

じゃあ、実際どうすればいいの?といえば、簡単で、一言でいえば、「海外に経済実態を移してしまうこと」。実際に海外に住んでしまい、海外でビジネスを行い、決済会社も海外のものを使えば、国内に実態があると見做されないのでなんら問題ないわけです。
ラブアン島の場合だと、近くのマレーシアで働くことは一切できません。が、ネット利用をしたビジネスであれば世界のどこにいても出来るわけだから、ラブアン島に拠点をおくことで大きな法人税削減のメリットを享受できます。
こーした試みを実際してる人はいるので、やる価値があると思ったら挑戦すればいいと思います。この「海外に経済実態を移してしまうこと」は色々なやり方が実際は考えらますしね。
原則ではなく例外的な話になりますが、ラブアン島にオフィスを構え、そしてそのラブアン島オフィスで実際に本事業の運営が行われているのであれば、たとえラブアン法人の株主が非居住者であったとしても、タックスヘイブン対策税制の適用が除外される場合もあります。ただ、それらの条件を整えるにはコストがそれなりにかかってしまうので、経済規模に合わせて検討をするべきです。
ラブアン法人の株主は日本居住または日本法人がなり、そのオーナーの会社の社員がマレーシアへ移住し(もしくは、そのオーナーのマレーシア在住のパートナーをラブアン法人の取締役にして、実際にラブアン法人の業務や経営管理はマレーシアで行い、タックスヘイブン対策税制の適用除外基準を目指すということも考えられるます。
要は、ちゃんとラブアン島で仕事してんの?って話ですよ(笑)
ただ、日本居住者のままラブアン法人の利用する場合は、日本側の税制の理解とそれへの対応が非常に重要なので、日本側の顧問税理士に十分に相談のうえ、日本の税制を理解・遵守のうえで、周到に準備することが最低条件です。
めんどくさがらずにこうした努力をしてる人が、節税のメリットを享受できるというわけです。儲かってる会社なら検討余地はそれでも十分あると思います。
1点、あるあるな注意事項として、株主の名義貸しサービスなるものがありますが、これ実態で税務署は見るので、名義貸しは意味ないとご理解ください。お金払うだけ無駄。
まー、実際のところ、結構複雑だとは思います。そのため、このスキームを利用するのは、その人個々人の選択肢になりますね。後、就労ビザの話は後述しますが、2000万くらいは金融資産を持ってから出るなら出たほうがいいです。
ラブアン島での法人設立&就労ビザ取得コスト

これも、ザクっと調べて見ました。
法人設立登記 2,000USD ※印紙代等の実費込。
法人口座開設 600USD ※口座開設の際に提出が求められるラブアン当局からのレター取得手数料やその実費込。
初年度のカンパニーセクレタリー報酬(1年分) 1,500USD
合計:4,100USD
なお、 マレーシアへ移住するためにラブアン法人で就労ビザを取得されたい場合(法人設立と銀行口座開設のみの場合は無視してください。)には、 資本金を引き上げる必要があり、その費用として別途500USD、そして就労ビザ申請費用として別途1,800USDが必要となります(扶養家族ビザはお一人あたり別途800USD)。
また、ビザが認可された後、ビザ発行料として一人あたり約1,250リンギが必要となります(扶養家族のビザは別途お一人あたり約750リンギ)。 つまり、ラブアン法人を設立し、一人分の就労ビザを取得するまでの費用としては、 上記4,100USD+500USD+1,800USD=6,400USD
実際に70-80万で海外に拠点を構築できて、住むこともできると思えば、普通か安いくらいだと個人的には思います。だから利用する人が多いんでしょうけどね。
あとは設立後のランニングコストについては、ラブアン法人の年間維持費はおおむね以下の通り。
【必ず毎年支払いが必要な費用】
1)USD2400 ※カンパニーセクレタリー料1500USドル、法人税申告100USドル、政府登録料800USドル。 毎年、法人設立月に支払い。 ※初年度分は、設立時費用4100USドルに含まれています。
2)法人税 3% または 20000リンギ ※休眠の場合や、Investment Holding のみの場合は無税。 【法人税3%を選択する事業年度のみ支払いが必要となる費用】
3)Auditor に対する監査報酬 USD1500前後から ※法人税20000リンギの支払いを選択する事業年度や休眠の場合やInvestment Holding のみの場合は、Auditorによる監査不要。 【会計帳簿の作成を外注する場合に必要となる費用】
4)仕訳数や売上や納品の頻度によってその都度発生
ラブアン島の就労ビザについて

ラブアン法人を設立し、ラブアン法人で就労するためのビザを取得することで、ラブアン島または西マレーシア半島(クアラルンプールやペナンやジョホールバルなどがある半島)に住むことができるようになります。
ラブアン法人を利用してビザを取得し、実際にマレーシアに生活の本拠を移して非居住者になる、というのはひとつの方法なのは先に述べた通り。代行会社がたくさんいますので取得自体は全部日本語で余裕。
但し、3月にOECDの視察団がラブアンを訪問し、「ラブアンがマネーロンダリングの調査を適切に行っているかどうか」等をチェック&指導を行ったという情報有。その影響により、現在ラブアンは引き締めムードになってる点は注意。タックスヘイブンは年々厳しくなっていく一方なので気をつけて下さい。
また、就労ビザについては、先ほどの経済実態の話と一緒で、「ビザを取得してマレーシアへ移住することが必要なビジネスかどうか」という点は必ずチェックされます。
この点、ビジネスのターゲットが日本のみというようなビジネスの場合は、マレーシアへ移住する必要性がない、と判断され、就労ビザが認可されない可能性は十分に有りえる点も注意が必要です。
なので、最低限、「現在日本で行っているサービスを、東南アジアの企業/個人へ提供することを考えている。そのためには、東南アジアの中心であるマレーシアを拠点にしたい」というような計画は必須です。
これともう一つ、マレーシアに滞在するためのビザとしてはMM2Hと言うものがあります。
・取得するために財産証明(最低50万リンギット=1350万)が必要(今年中に倍額になる可能性有)
・定期預金(最低30万リンギット=810万)が必要(今年中に倍額になる可能性有)
・就労不可のビザ(法人からの給与での所得移転ができない。投資は可能。株式配当貰う等)
・働けないビザなので所得が発生しないのが普通で税務は手間なし
・滞在義務がないので日本との行き来は自由
・日本から6ヶ月以上所有してる車を免税で1台持ち込める
・家族を連れて行ける
・就労ビザに比べると若干、「非居住者」として認められにくい
世界では、中国人についで日本人が二番目に取得の多いビザになります。マレーシアに住むのが目的であれば滞在義務もないですし、セカンドハウスを構えて日本との往復で悠々自適な生活をするためにとる人も多いです。
もちろん、節税にも利用できますし、ラブアン島の法人設立して、就労ビザではなくこちらのビザを取得する人もいます。これに対して、もう一度、就労ビザの特徴を記載してみます。
1、毎月給料のかたちで法人から個人へ所得移転できる
2、収入証明、定期預金はいらない。資本金は必要なものの、一旦入金した後にすぐに事業や投資に使える
3、ビザ申請の際にビジネスプラン作成が必要
4、毎月給料を受け取ることが条件なので個人所得税の支払いや税務申告などが発生
5、2年毎に更新が必要(MM2Hは10年に一回の更新でよい) ※就労ビザの更新手続きは、新規申請時と同等(あるいはそれ以上に)手間がかかります。
6、ビザが認可された後にビザ発給実費として1,250リンギ が必要
7、二人目までは比較的通りやすい
どちらにも特徴が有り、取得するために満たさなければならない制度趣旨がある。そこをきちんと抑えた上でどちらを選択するかは、マレーシアに住む人は十分考えて見てください。
ラブアン島での口座開設方法

これは現地までいって英語ができる人ならそんなに難しくはないですが、代行業者を利用したほうが手間はないですね。費用は前述した通りなので、サクッと作ってしまえるのも特徴。
法人設立の代行業者であれば、ほぼ全てサービスになってるんじゃないかな?
ラブアン島でFX、仮想通貨などの個人投資家はお得?

結論から言えば、投資の税金対策をしたいならシンガポール住め。以上笑 という感じ。単純にタックスヘイブン地域に法人を作ったからはいそれで税金対策完了なんて、楽な話ではないのはここまで読んでもらえれば理解はできたと思います。
タックスヘブンに対する対策も、ガッチガッチになってきてるのが国内の特徴なので、ガチで投資で稼ぐならシンガポールやドバイなどの投資に税金がかからない地域で稼ぐ方が楽なのは間違いない。
一時的に仮想通貨投資の影響で注目を浴びたけど、よくよく考えて見たらここにこだわる理由はあまりないことに気づくはず。勿論、別の見立てを持って取り組むのであれば、全く問題ないわけですけどね。
まとめ

そもそも、なんでラブアン島がこんなに税金が安いのかには当然理由が有ります。
ラブアン法人は、法律上の建前として、 「ラブアン島内で、マレーシア国外に向けてビジネスを行っている。だからこそ、通常のマレーシアの税制ではなく、ラブアンの優遇的な税制の対象となる。」という建前がある。
実際のところ、 ラブアン島に住んでラブアン法人を利用している人は少数で、 ほとんどの人はKL等に住んでいる見たいだが、 財政難のマレーシアが、今後、万が一この建前を厳格に解して来ることも考えらるわけです。
そうなると、当然、西マレーシア(KLやジョホールバル等)で仕事をしながら、 売上はすべてラブアンに計上している、 そしてラブアン島に法人としての実態はない というようなケースに関して、 マレーシアの普通の法人税(24%)を課してくる可能性は全然ありえます。
この対策としては、ラブアン法人の売上が大きくなったあとで、ラブアン島でオフィスを構えたり(レンタオフィスもある) 現地スタッフの採用も考えたり、年に一度か二度くらいは、できればラブアン島へ行って、ラブアン島で経営判断を行っているといえるようにするなどの対策というか実態を揃える必要が出るかもしれない。
マレーシアへ移住して日本の税法上の「非居住者」となり、ラブアン法人名義で日本の顧客に対してサービスを提供する場合でも、日本に恒久的施設がある場合は日本での事業所得に関してラブアン法人が日本で課税される場合も有ります。
恒久的施設がない場合でも顧客が日本居住者の場合はラブアン法人が日本の消費税の課税対象となるとも言われてます。(この消費税課税は近年の法改正による新しい論点)。
こうした議論が日本の税務マターとしてはっきりあるので、事前に日本側の税理士に十分に相談しておくのが大切と改めて念押ししたい。 なお、国際的な税務の問題は、こうした事例を専門に扱う人を探した方が良い日本の国税との調整もすごく大事なのは繰り返しになるが改めて認識をしっかりと持って欲しいです。
「国際税務 (地域名) 税理士」で検索し、国際税務に力を入れている税理士を見つけてまずは、相談に行って欲しい。※参照 非居住者(=外国法人含む)に対する課税の仕組み ーー国税庁ウェブサイト
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